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乳癌の標準治療〜2つの薬物治療について〜

乳癌治療における薬物療法には、手術前に癌細胞を抑制しておく『術前薬物療法』と、手術後に全身への転移を抑える『術後薬物療法』という2種類の治療法があり、病気の進行具合や患者の希望、ライフスタイルなどを考慮して治療方針を決定するそう。

いずれにしても、抗がん剤治療には副作用がつきもの。辛い副作用をコントロールしつつ、確実に癌細胞を抑制できる方法を考えなければなりません。癌の薬物療法を受ける際に重視しなければならないのは、副作用で生じる不調や生活への支障と、病気を治療する効果とをしっかり比較して、患者自身が納得できる方法を選択できるかどうかにあると言えるでしょう。

そこで、薬物治療の2種類の方法を解説しながら、抗がん剤が癌に作用する仕組みや投与のスケジュール、使用される薬剤などを紹介していきましょう。

術前薬物療法とは?

乳癌の薬物療法のうち、腫瘍の切除手術前に行う薬物療法を言います。その目的や効果、治療のスケジュール等を以下にまとめました。

腫瘍を小さくしてから手術を行うのが目的

術前薬物療法の目的は、より確実な手術にするために、手術前に腫瘍を小さくすること。それによって、完治する可能性を広げるのです。

たとえば、「乳房温存手術」の適応条件は腫瘍の大きさが3㎝以下であること。しかし、3㎝より大きければすべて全摘手術をしなければいけない!というわけでは決してありません。術前薬物療法によって3㎝以下にまで小さくできれば、乳房温存手術も選択できるようになるのです。

また、皮膚表面にまで腫瘍が達しているケースや、胸筋や胸骨の脇のリンパ節などに転移がみられるケースなどは、「局所進行乳癌」と診断されます。この場合、乳房切除手術を行ってもあまり効果がないとして、手術をしないという選択がされることがあります。

このように病状が進行してしまっている場合でも、術前薬物療法によって、手術ができる病状にまでもっていける可能性があるのです。

術前薬物療法の方法&スケジュール

手術の4~6ヶ月前あたりから薬剤を投与し始めるケースが多いようです。

投与スケジュールは通常の抗がん剤治療とほぼ同じ。1回投与したら2~3週間ほど休み、再び投与。これを4~6回ほど繰り返します。

抗がん剤は癌細胞と正常な細胞の両者にダメージを与えますが、正常な細胞の方が抗がん剤に対する耐性が強いため、癌細胞より少し早い2~3週間ほどで回復をみせます。つまり、癌細胞の回復が追いつく前に再投与を繰り返すことで、癌細胞だけを徐々に衰えさせていくのです。

再投与の実際のタイミングは、白血球の回復状況をみながら判断するのが通常。回復が遅い場合や副作用で体調が悪い場合などは、再投与の延期・中止が選択されることもあります。

術前薬物療法の前に知っておきたい抗がん剤一覧

術前薬物療法に使われることが多い薬剤を以下にピックアップしました。(下記に挙げたもの以外にもさまざまな抗がん剤があります。)

  • <アルキル化剤> エンドキサン(記号:CまたはCPA)など

アルキル基という原子のかたまりを細胞増殖の際に必要なDNAにくっ付けて、DNA構造を変化させ、増殖を抑制する薬剤です。

  • <抗腫瘍性抗生物質(アンスラサイクリン系)> アドリアシン(記号:AまたはADR)、ファルモルビシン(記号:EまたはEPI)など

細胞分裂や新たな細胞を作るのに必要となるDNAと結合し、DNAやRNAの合成を阻害することによって癌細胞の増殖を抑制する薬剤です。

  • <微小管作用剤(タキサン系)> タキソール(記号:TまたはPTX)、タキソテール(記号:TまたはDTX)など

細胞分裂に関係する微小管に作用し、癌細胞の分裂を阻害する薬剤。天然のイチイの木から抽出されます。

術前薬物療法の目的は腫瘍を目に見えて小さくすることが主なため、比較的効果が強いとされる薬を組み合わせます。

上記薬剤の中から、とりわけ強い作用をもつアンスラサイクリン系の「アドリアシン(記号A)」や「ファルモルビシン(記号E)」と、タキサン系の「タキソール(記号T)」等を組み合わせることが多いようです。

術後薬物療法とは?

乳癌の薬物療法のうち、腫瘍の切除手術後に行う薬物療法を言います。その目的や効果、治療の内容等を以下にまとめました。

転移・再発の可能性をなくすことが目的

乳癌は、周辺への転移が比較的早期から起こりやすい病気。乳房内の腫瘍を手術で取り除いても、見えない微細な癌細胞が全身に散らばっている可能性もなくはないのです。

薬物療法なら1度の治療で全身に作用するため、術後の再発・転移予防によく用いられるというわけです。

抗がん剤のほか、ホルモン剤による薬物療法も全身に作用します。ホルモン剤が効かない種類の癌である場合に、抗がん剤の薬物療法を行うのが一般的です。

術後薬物療法が必要なケースは?

術後の病理検査などをもとに薬物療法が必要かどうか判断されますが、必要となるケースには以下のようなものがあります。

  • 腋窩リンパ節への転移がある
  • エストロゲン・プロゲステロンのホルモンレセプターが陰性である
  • どちらかのホルモンレセプターが陽性で、35歳以上、腫瘍が2cm以上、グレードが2または3である

用いる薬剤は、転移・再発の可能性の高さによって異なる

術後の経過や病理検査の結果によって転移・再発が起こる可能性が高いと判断された場合は、より強い抗がん剤を用いた薬物療法が行われます。

再発の可能性が高い場合はアンスラサイクリン系の抗がん剤など強めの薬剤を用いることになり、一方低い場合は、代謝拮抗剤等をメインした薬物療法も考えられます。

以下に、用いられる薬剤の組み合わせを、再発の可能性別にまとめてみました。

可能性が高い場合

アンスラサイクリン系(アドリアシンやファルモルビジンなど)+タキサン系(タキソールなど)の組み合わせが一般的

可能性が中程度の場合

アンスラサイクリン系+アルキル化剤(エンドキサンなど)または代謝拮抗剤(UFT、フルツロンなど)の組み合わせが一般的

可能性が低い場合

アルキル化剤+代謝拮抗剤の組み合わせが一般的

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